能勢ネイチャーランド

【野鳥観察基礎知識】

宮脇先生の野鳥コラムVol.5「春を告げるウグイス」

能勢・田尻では2月の終わり頃から山やヤブの中から「ホー、ホケキョ…」という鳴き声が聞こえてきます。「え?何の鳴き声?」と一瞬、耳を疑いますが、これがウグイスの初鳴きである。
ecc719fbe416a02cf465d8c681ba0683_s

多くの異名を持つ「ウグイス」

218
ウグイスは全長約15.5cm(オス)。細身でオス・メス同色ですが、メスは2cmほども小さいのが一般的です。知らぬ人はいない、最も親しまれている「ホー、ホケキョウ」(法、法華経)という、このありがたい鳴き声が聞こえるのは3月に入ってから。別名「春を告げる鳥」(春告鳥)と言ったり、「お経を読む鳥」(経読鳥)として昔から親しまれてきた野鳥のひとつ。

声だけ聞こえて姿を見せない様は、まさに「ウグイス嬢」

美しい鳴き声で私たちを楽しませてくれるウグイスですが、実はその姿を見たことがある人は少ないのではないでしょうか。普段はヤブの中にかくれていて、鳴き声は聞こえてもなかなか姿を現してくれない、そんなシャイな一面もウグイスにはあります。
uguisu1729
ウグイスを描いた絵画の中に、メジロの色を着けてあるものも多くあるため、「ウグイス色」をメジロの色と思っている人も結構多いものです。そんな鳥であることから、姿を見せずに、選挙カーの中で候補者の名前を連呼する女性のことを「ウグイス嬢」と呼ぶのは、実に適格なネーミング。つまり、ウグイスは、姿を見ることは潔く断念し、あのありがたい鳴き声と音量を鑑賞するのに適した鳥である。写真を撮るよりも、どちらかと言えば録音を楽しむのに向いている鳥とも言える。

繁殖期後は「さえずり」から「地鳴き」に

1f17cfad489f632ea33e3f9dc56982c2_s
ウグイスの鳴き方は昔から詳しく分析されており、太口と細口があるとか。”黄色に光るように鳴くもの”を藪口といって低く評価されたり、ホーホケキョのキとヨが分かれて聞こえるものを「カナクチ」、キョと続けて聞こえるものを「ムジクチ」と言っていたそうだ。また、鳴き声の高中低をタカコ、ナカコ、サゲと呼んで、ウグイスの鳴き声の評価は、サゲ(低音)の良し悪しで決めていたというから興味深い。また、繁殖期を済ませたウグイスは、晩秋頃から鳴き声が急に聞かれなくなります。よく「ウグイスはどこに行ったの?」と聞かれることがありますが、実は身近にちゃんと居ます。この頃になると「チァッ、チァッ……」という、地鳴きという鳴き声に変わっているのです。さて、藪や笹の中で生活するウグイスも、冬場、庭に豚の脂身を置くことで簡単に観察することができる。冬中、地鳴きで「チャッ、チャッ」と鳴いていたウグイスも、やがて春が来て山に帰る頃になると、一宿一飯のお礼に、家の近くで「ホーホケキョ」と鳴いてくれるかも知れない。

※参考文献: 「田尻の野鳥」 宮脇 敏徳(サンクチュアリ能勢代表)

コラム筆者プロフィール

photo_miyawaki

サンクチュアリ能勢代表
宮脇 敏徳 先生
大阪府能勢町の小学校教員・校長を歴任した後、大阪府鳥獣保護員、日本野鳥の会大阪支部会員、NPO法人シニア自然大学校会員として探鳥活動の指導・啓発、自然保護活動に参加。弊社開催の里山ハイキングやバードウォッチングのナビゲーターとして、初心者にも解りやすく野鳥の魅力を教えてくださる野鳥の案内人。


上へ

ネイチャーランド能勢-自然体験&天体観測

〒563-0131
大阪府豊能郡能勢町野間大原325
協栄産業株式会社
TEL:072-737-1704
FAX:072-737-1706