能勢ネイチャーランド

【野鳥観察基礎知識】

宮脇先生の野鳥コラムVol.17 日本書紀にも登場する~セキレイ~

田尻川の水辺で、黒色と黄色のスマートな鳥が「チチン、チチン」、「ツィ、ツィ」と鳴きながら飛び回っている姿を見かけたり、川岸の石の上で長い尾を振っている姿を見かけたりする。この鳥はスズメよりも少し大きく、主に川の上流に住むキセキレイである。この鳥は、スズメ目セキレイ科に属する鳥であるが、田尻川は猪名川の上流に位置することからキセキレイの他にセグロセキレイの2種類のセキレイが観察できていた。しかし、二十世紀後半頃からハクセキレイの進出が目まぐるしく、田尻川の上流域でもキセキレイ・セグロセキレイ・ハクセキレイの3種類が普通に観察できるようになった。この鳥は、ほっそりとした均整のとれた体形で長い尾を持った美しい姿をしており、その尾を絶えず上下に動かす。そのことから、別名「石たたき」・「庭たたき」とも呼ばれている。

↑キセキレイ

セキレイの仲間は、日本だけしか生息していない固有種

尾を絶えず上下に振ることことから、日本書記にもこの鳥が出ている。「(この鳥が)飛び来りて其の首尾(かしらを)を揺(うごか)す。二(ふたはしら)の神、見(みそなは)して学(なら)ひて、即ち交(とつぎ)の道を得つ」とある。二(ふたつはしら)の神とは、私たちの祖先とされている二神、「いざなぎ・いざなみの尊」のことである。いざなみの尊が、いざなぎの尊を素晴らしい女性と思ったけど、交(とつぎ)の術を知らず、困っているところに、セキレイ(トツギオシエドリ)が飛びきたりて、首尾を揺すり、二神はこれを見て学んだという意味である。つまり、「いざなぎ・いざなみの尊」は、セキレイに性教育を受けていたことになる。

↑ハクセキレイ

日本で最初に文献に現れる記念すべき鳥

さらに、江戸時代中期の儒学者である新井白石は、「東雅(とうが)」という本の中に、「陰陽二神(いざなぎ・いざなみの尊)この鳥を見て人の道を知り給いしと見えたり、さらば、この国の鳥の名、これより先なるものあらじ」と書いている。つまり、セキレイは、日本で最初に文献に現れる記念すべき鳥だとお墨付きである。だから、もしセキレイがいなかったら、私たちはこの世の中に存在していないかも知れない。

↑亜種ホオジロハクセキレイ

日本で最初に水洗トイレも発明?

また、この鳥は、とても綺麗好きな鳥である。ヒナを育てる時、ヒナが出すフンを巣の中に置いておくと不衛生になるため、親鳥は、ヒナが出すフンを上手に加え巣から離れた川の水の中に流す、ところで、この鳥に教えられ、「水洗トイレ」が発明されたのかどうかは分からない。

↑セグロセキレイ
※参考文献:「田尻の野鳥」 宮脇 敏徳(サンクチュアリ能勢代表)

コラム筆者プロフィール

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サンクチュアリ能勢代表
宮脇 敏徳 先生
大阪府能勢町の小学校教員・校長を歴任した後、大阪府鳥獣保護員、日本野鳥の会大阪支部会員、NPO法人シニア自然大学校会員として探鳥活動の指導・啓発、自然保護活動に参加。弊社開催の里山ハイキングやバードウォッチングのナビゲーターとして、初心者にも解りやすく野鳥の魅力を教えてくださる野鳥の案内人。


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