能勢ネイチャーランド

【野鳥観察基礎知識】

宮脇先生の野鳥コラムVol.14ヒラヒラと舞う日本の『極楽鳥』~サンコウチョウ~

かつて教え子だった子どもたちが、図鑑を片手に「先生、本当にこんな鳥が日本にいるんですか?」と聞きに来たことがあった。その図鑑を覗いてみると、体の3倍ほどある非常に長い尾羽の野鳥「サンコウチョウ」が紹介されていた。「スズメ目カササギヒタキ科のスズメよりやや大きな体をした可愛い美しい鳥。東南アジアから日本にかけて生息しており、日本には夏鳥として渡ってきて、主として本州以南の平野や低山の暗い林内に生息し、繁殖している」と記載されてあった。

さて、サンコウチョウのオスは、全長が約45㎝、頭部、喉部、胸部が濃青色で、背部、翼部は淡い茶色の入り混じった青色縦縞斑紋になっており、腹部は白色をしている。頭部には、後方に跳ねた短い冠羽があり、30cmを超えるとても長い濃青色の尾羽を持っている鳥である。さらに、オス・メスともに目の周りとクチバシが美しいコバルトブルーに輝いており、一見したところでは青い鳥にも見える。メスは18cmほどで、翼羽と尾羽が赤茶色をしていることと、冠羽はオスに比べて短い。羽を広げた状態は約28cm、この鳥の名称は、その鳴き声が「ツキ、ヒ、ホシ、ホイホイホイ」と良く通る声でさえずることから、「ツキ(月)、ヒ(日)、ホシ(星)」=月・日・星の3つの光の鳥という意味で三光鳥(サンコウチョウ)と名付けられている。しかし、前部分の「ツキ、ヒ、ホシ」と聞取ることは殆んど難しい。後部分の「ホイホイホイ」は容易に聞取ることができ、基本的な三拍子は特徴ある鳴き声で覚えやすい鳥でもある。

そこで、教え子たちを引き連れ、豊能町の初谷川沿いで探鳥会をしたことがある。林内を歩いていると、目の前を二羽の鳥がヒラヒラと飛びながら横切った。一瞬の出来事であったため、私の目には残像としてその二羽の姿が残り、その瞬間とても不思議な気持ちになった経験がある。もちろん、教え子たちの誰も気付いていなかった。
しばらくその場に立ち止まり、周りの様子をうかがっていると、前記のようなさえずりがだんだんと近づいてきて、何と目の前にその姿を見せてくれたのです。
その瞬間、教え子たち全員が固唾を呑みながら、サンコウチョウのオス・メスの勇姿に魅入ったのは言うまでもないことである。

その勇姿は、まさに日本の「極楽鳥」そのもの。コバルト色に輝く幅広のアイリングとクチバシ、長い尾をヒラヒラと揺らして飛ぶ姿は、まさにおとぎ話の世界。一度、聞いたり、観たりしたら、まず忘れられない。都市近郊ではなかなかお目にかかることができないサンコウチョウ。能勢に住んでいる幸せをかみしめた瞬間であった。
※参考文献:「田尻の野鳥」 宮脇 敏徳(サンクチュアリ能勢代表)

コラム筆者プロフィール

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サンクチュアリ能勢代表
宮脇 敏徳 先生
大阪府能勢町の小学校教員・校長を歴任した後、大阪府鳥獣保護員、日本野鳥の会大阪支部会員、NPO法人シニア自然大学校会員として探鳥活動の指導・啓発、自然保護活動に参加。弊社開催の里山ハイキングやバードウォッチングのナビゲーターとして、初心者にも解りやすく野鳥の魅力を教えてくださる野鳥の案内人。


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