能勢ネイチャーランド

【野鳥観察基礎知識】

宮脇先生の野鳥コラムVol.6「初夏の名声優、カッコウ」

能勢・田尻界隈では初夏から夏にかけてカッコウの仲間、ホトトギスの鳴き声はよく耳にするものの、カッコウの鳴き声を聞く機会は少ない。その鳴き声を聞いた人が「本当にカッコーと鳴いている!」と驚いていたのを思い出します。カッコウは、それほど単純明朗で力強く、誰でも一度聞いたら必ず印象に残る鳴き声の鳥です。
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他人に子どもを育ててもらう「托卵」システム

カッコウの仲間に、ホトトギス、ツツドリ、ジュウイチなどが挙げられますが、この鳥たちはすべて自分では巣を作らず、他の鳥などの巣に卵を産み付け、それらの鳥に我が子を育てさせています。これを「托卵」と言います。仮親たちの中には、自分の何倍もの大きさがあるカッコウのヒナを我が子と信じでエサを与えている。このような子育てを見て私たち人間は「育児放棄」的な印象を持ちがちです。しかし、最近の調査の結果、仮親もだんだんと賢くなって、自分の卵とカッコウの卵を識別する能力が向上してきているらしい。そのことから考えると、托卵する仮親の巣をいくつも見分けておき、相手の産卵期に合わせて、それも留守を狙って産み付けるのだから、決して楽をしているわけではないのです。

世界共通!?鳴き声から由来するカッコウの名前

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カッコウは英語では「Common Cockoo」といい、鳴き声にちなんだ名前が付けられている。漢字では「郭公」、別名は「閑古鳥」。鳴き声を聞いていると、実に「のどか」という言葉がぴったりの鳥である。能勢町のような自然度の高い地域では、都会では味わえない醍醐味があります。鳥の鳴き声で目覚め、鳴き声をBGMにしながらの生活は今も昔も変わっていません。ちなみに、ヨーロッパでは、カッコウが姿を現す季節になると、少女たちは最初に聞いたカッコウの鳴き声の数で、自分があと何年経ったら結婚するかを占ったりするそうです。

野鳥の鳴き声から生まれた童話や童謡

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昔から、「鳥は人間の生まれ変わり」と言われ、鳥の方から人間に語りかけてくれているのだという思いから、たくさんの昔話が生まれてきました。とりわけ、鳥の鳴き声の由来を語る昔話には、亡くなった親や子どもへの切ない思いが込められ、胸を打たれるものが多くあります。宮沢賢治の童話「セロ弾きのゴーシュ」に登場するカッコウは気の毒な鳥として描かれています。活動写真館でセロを弾く係りだったゴーシュ。演奏会に向けてセロの猛練練習中だったゴーシュは、カッコウの鳴き声に合わせてセロを奏でていたところ、カッコウの鳴き声が自分のセロよりも素敵な音色に聞こえ突然カッコウを追い出そうとします。驚いたカッコウは窓に頭をぶつけ飛び出していく・・・やがて、演奏会に成功したゴーシュは「あぁ、カッコウ。あの時はすまなかったなぁ」とつぶやきます。鳥も人間も同じ仲間でありたいと願い続けた宮沢賢治ならではの童話で、カッコウの声をきくたびに鳥の優しさを思わずにはいられません。

※参考文献: 「田尻の野鳥」 宮脇 敏徳(サンクチュアリ能勢代表)

コラム筆者プロフィール

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サンクチュアリ能勢代表
宮脇 敏徳 先生
大阪府能勢町の小学校教員・校長を歴任した後、大阪府鳥獣保護員、日本野鳥の会大阪支部会員、NPO法人シニア自然大学校会員として探鳥活動の指導・啓発、自然保護活動に参加。弊社開催の里山ハイキングやバードウォッチングのナビゲーターとして、初心者にも解りやすく野鳥の魅力を教えてくださる野鳥の案内人。


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