能勢ネイチャーランド

【野鳥観察基礎知識】

宮脇先生の野鳥コラムVol.10「松上のツル~コウノトリ~」

コウノトリは、コウノトリ目コウノトリ科に属し、遠目にはツルと似た姿をしている。 絶滅が危惧されており、国の特別天然記念物に指定されている。コウノトリと言えば「赤ちゃんはどこからくるの?」「コウノトリが運んできてくれるのよ」。この言い伝えは日本ではあまりにも有名である。この伝説はヨーロッパでも広く知られており、ドイツの「シュバシコウ(赤いクチバシをしたコウノトリ)」という鳥が、長年子どものできなかった夫婦宅で繁殖をしたところ、子どもを授かったというエピソードが元になっているのだとか。
↑シュバシコウ

高いところで営巣する「松上のツル」

以前、川西市出身の明治生まれの古老より、「わしが小さい頃、ツルが樹の上で子育てしとったのを見た…。」との話を聞いたことがある。「松上のツル」とは長寿を祝うめでたいお言葉。この古老は、軽度認知障がいを患ってはいましたが、何度となくその話を繰り返していたと聞く。日本では、時代や地方によってツルのことをコウノトリと呼んだり、反対にコウノトリのことをツルと呼んだりこともあったようだが、ツルは湿原等で子育てする鳥であるため、松上で子育てするということはない。この古老の話から察するに、明治の頃は、コウノトリは川西市周辺で子育てしていたのかも知れない。

コウノトリ特有の「クラッタリング」

コウノトリの全長は約110〜115cm。 翼を広げると160〜200cm、体重4〜6kgにもなる非常に大型の水鳥である。羽色は白と光沢のある黒色、クチバシは黒味がかった濃い褐色で脚は赤色で遠くから見るとツルとよく似ていて、目の周囲にアイリングがあり何とも高貴な雰囲気をまとっている。コウノトリは大木の樹上や建築物鉄塔などの高所に巣を作り、枝を集めて作った巣で1度に3~5個の卵を産み、約1カ月で孵化。親鳥はオスメス共同で子育てした後、60日前後で目出度く巣立ちを迎える。コウノトリの雛は「ピヨピヨ」と鳴くが、成鳥になるとクチバシを「カタカタカタカタ」と激しく打ち鳴らす「クラッタリング」という方法で仲間とコミュニケーションを取る。この「クラッタリング」は、主にオスが求愛や威嚇時に行うことが多い。

コウノトリの保護活動


コウノトリは、江戸時代では人間と共に狩りをするほど身近な存在であった。明治時代になると近代化の影響で一気に数が減り、昭和28年には国の天然記念物に指定。そして、国内野生個体が絶滅してしまったコウノトリを保護し、野生化させる活動を行った地域がある。そのひとつが日本で最後の生息地であった兵庫県豊岡市にある「コウノトリの郷公園」。ロシアから譲り受けた6羽のコウノトリを118羽まで殖やすことに成功し、2005年にはそのうち5羽が里山に自然放鳥されるという初めての試みに世界中から注目を集めた。2007年には放鳥後初めての野外での巣立ちに成功。その時ヒナの孵化は国内では43年ぶり,巣立ちは46年ぶりという。一旦絶滅したコウノトリの再生に、なんと40年という月日が必要だったわけだ。昔は当たり前のように里山で人間と共存してきたコウノトリだが、私たち人間が便利さを追求してきた結果、コウノトリを絶滅に追いやったという代償はあまりにも大きかったのではないだろうか。現在、自然放鳥から13年目を迎えようとしているが、「コウノトリの郷公園」調査によると、野外個体数122羽、飼育個体数101羽(2018年1月5日現在)まで増えてきているとのこと。なお、国内外を問わず放鳥が行われるなど、コウノトリの野生復帰の取り組みは着実に広がりつつある。

コラム筆者プロフィール

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サンクチュアリ能勢代表
宮脇 敏徳 先生
大阪府能勢町の小学校教員・校長を歴任した後、大阪府鳥獣保護員、日本野鳥の会大阪支部会員、NPO法人シニア自然大学校会員として探鳥活動の指導・啓発、自然保護活動に参加。弊社開催の里山ハイキングやバードウォッチングのナビゲーターとして、初心者にも解りやすく野鳥の魅力を教えてくださる野鳥の案内人。


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