能勢ネイチャーランド

【野鳥観察基礎知識】

宮脇先生の野鳥コラムVol.11「シジュウカラは言葉を話す!?」


桜のつぼみが芽吹きはじめた今日この頃、私の住む能勢では「ツピッ」「ツーツー」「ジュクジュクジュク」と言う鳴き声が聞こえてくるようになりました。これは、シジュウカラのさえずりで、自分の縄張りを示したり、オスがメスに自分の魅力をアピールするための鳴き声です。先日、私が所属するシニア自然大学校の公開講座で、このシジュウカラについてのある研究が発表されました。それは、なんとシジュウカラは私たち人間と同じように異なる単語を組み合わせてコミュニケーションを取っているというもの。今回は「言葉を話すのは人間だけ」というこれまでの常識を覆す、シジュウカラの知られざる能力について紹介したいと思います。

黒いネクタイがトレードマークのシジュウカラ


シジュウカラはスズメよりも小さな体で頭と首が黒色、頬にある白い部分がよく目立つ鳥です。森や林を主なすみかにしますが、人家のまわりでよく見られる身近な鳥でもあります。最大の特徴は、胸から腹にかけてネクタイのように黒い帯があるため、別名「ネクタイ鳥」とも呼ばれていて、このネクタイ部分の太いのがオス、細いのがメス。シジュウカラは先にご紹介した「ツピッ」「ツーツー」「ジュクジュクジュク」というさえずりのほか、「チカチカ」「ジャージャー」という複雑な地鳴きを発することでも有名ですが、京都大学の生態学研究センター機関の鈴木俊貴研究員はこの地鳴きに注目し、10年に渡って動物行動学的な観点から研究を重ねてこられたそうです。その結果、シジュウカラは異なる鳴き声を使い分けたり、それらを組み合わせることでヒナやつがい、群れの仲間に複雑な情報を伝え、自然界をたくみに生き抜いていることが解ったというから驚きです。

親鳥とヒナとの間で交わされる言葉とは


一夫一婦制で営巣するシジュウカラ。卵やヒナを雨や天敵から守るため、彼らは樹木にできた空洞(樹洞)に苔などを運び込み、子育てするための家を作ります。しかし、ハシブトガラスやアオダイショウは巧みなハンティングスキルを使って、シジュウカラのヒナを狙うことがしばしばあります。鈴木さんは、シジュウカラの親鳥が天敵の種類に応じて異なる鳴き声を使い分けていることに着目し、親鳥の鳴き声がヒナに対してどのような情報を伝えているのか、樹洞の中に小型カメラを設置して鳴き声に対するヒナの反応を観察。すると、驚くことに親鳥がハシブトガラスを見つけて「チカチカ」と鳴くと、ヒナたちは樹洞の中で体勢を低くし、うずくまることで巣口のカラスの嘴から身を守り、アオダイショウを見つけた親鳥が「ジャージャー」と鳴くとヒナたちは一斉に樹洞から外に飛び出て、アオダイショウの侵入前に巣から脱出するという反応が確認されたのだ。

群れの中でも使われる音声コミュニケーション

繁殖を終えたシジュウカラは、秋になると数羽から十数羽の仲間とともに群れを成し生活を始めます。このとき、よく耳にするのが「ヂヂヂヂ」という声で、仲間と遠く離れてしまったときや木の実やヒマワリの種などの餌を見つけたときなどに使われます。鈴木さんの研究では「ヂヂヂヂ」という声を聞くと群れの仲間が集まることから、主に「集まれ!」という音声コミュニケーションとして使われていることが判明。さらに、「スィー」という声は猛禽類が上空に現れたときに発せられ、群れはこの声を聞くと枝の密集した藪に逃げ込みじっと身を伏せ、「ピーツピ」という声には首を左右に振りながら周囲を確認するという反応がみられ、天敵などが身近に迫ったときに使われている。つまり、「ヂヂヂヂ」は「集まれ!」、「ピーツピ」は「警戒しろ!」という意味で使われているのだ。

驚くべきシジュウカラの言語能力

シジュウカラが発する音声コミュニケーションでは、「ピーツピ」と「ヂヂヂヂ」を「ピーツピ・ヂヂヂヂ」などの決まった順序のみに組み合わせから、様々な単語の意味を生み出していることも研究結果から判明したそうです。文法法則にしたがって、単語を組み合わせ文を作る能力は、これまで人間だけの進化した言語能力だとされてきましたが、鈴木さんの研究によりシジュウカラが異なる意味を持つ鳴き声(単語)を規則に従って組み合わせ、より複雑なメッセージ(文)を作っていることが明らかになりました。私たち人間は国によって様々な言語が存在し、違う国の言葉を話すのに四苦八苦している。しかし、シジュウカラ語は万国共通、ある意味人間よりも合理的に生きていると言えるのではないだろうか。

※参考文献: 2018年2月シニア自然大学校 第10回公開講座~身近な野鳥「シジュウカラ」のトピックス!シジュウカラ同士で話し合っている~『鳥の鳴き声に単語や文法?シジュウカラ語・大研究!!』講座内容概要
「田尻の野鳥」 宮脇 敏徳(サンクチュアリ能勢代表)

コラム筆者プロフィール

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サンクチュアリ能勢代表
宮脇 敏徳 先生
大阪府能勢町の小学校教員・校長を歴任した後、大阪府鳥獣保護員、日本野鳥の会大阪支部会員、NPO法人シニア自然大学校会員として探鳥活動の指導・啓発、自然保護活動に参加。弊社開催の里山ハイキングやバードウォッチングのナビゲーターとして、初心者にも解りやすく野鳥の魅力を教えてくださる野鳥の案内人。


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