能勢ネイチャーランド

【野鳥観察基礎知識】

宮脇先生の野鳥コラムVol.8「形は小さくても立派なキツツキ~コゲラ~」

バードウォチングをしていると、小枝の隙間から「ギィーッ、ギィーッ」「ギィーッ、ギィーッ」という鳴き声が聞こえてくる。よく目を凝らすと、小枝を上方やらせん状にくるくる回りながらエサを捜しているこの鳥に気づく。日本のキツツキの中ではもっとも小さい「コゲラ」という鳥である。

足・爪・尾羽を使って自由に動く虫捕りの名人

能勢町で見られたことのあるキツツキ科の鳥は、アオゲラ・アカゲラ・オオアカゲラと、このコゲラの四種。その中で、コゲラの大きさはほぼスズメと同じ。前足二本、後ろ足二本の強力な足と爪、硬い尾羽の3点でピッタリと張り付き、木の幹を自由に歩いて木の幹や樹皮に潜んでいるカマキリ虫の幼虫などをつり出して食べている。

コゲラのドラミング

繁殖期になると、枯れた木を叩いて「ドロドロドロドロロ」というドラミングの音を響かせる。この音を聞くと「僕だって、体は小さいけど立派なキツツキだぞ!」と主張しているかのように聞こえる。ある時、コゲラのドラミングを聞いた一人の子どもが、突然「カエルのオナラみたいな音や!」と言ったことを思い出します。子どもの発想は実にユニークであり、非科学的であっても的を射ているから素晴らしい。

「キツツキはなぜ頭が痛くならないのか?」

皆さんは、イグ・ノーベル賞をご存知だろうか?1991年に創設された「人々を笑わせ、そして考えさせてくれる研究」に対して与えられるノーベル賞のパロディーである。2006年、このイグ・ノーベル賞において「頭を振り続けるキツツキはなぜ頭痛に見舞われないのか」の研究で、米カリフォルニア大学のアイバン・R・シュワブ氏とカリフォルニア大学のフィリップ・R・A・メイ氏に、鳥類学賞が贈られた。シュワブ先生が研究したエボシクマゲラというキツツキは、多い時には1日で12,000回、1秒間では最大20回も木をトントンと叩きます。それなのにキツツキが頭痛にならないのは、一体なぜなのだろうか?その理由は・・・キツツキは嘴の先で激しくつついた時にかかる衝撃を、体全体へと散らばらせる仕組を持っているから。例えば、嘴の付け根辺りには衝撃を和らげるクッションの役目を果たす筋肉が発達し、頭の骨は分厚く頑丈で頭の中の脳を傷つけないようになっている。さらに脳自体がとても小さく、衝撃によって脳が受ける影響は最小限に食い止めることができるのだ。研究ではキツツキは、木をつつくほんのわずか前に瞬きをしていることもわかり、この瞬きは木くずが目に入るのを防ぐと共に、頭の中身が目のところから飛び出してしまわないようにシートベルトの役割を果たしているのだそう。しかし、それを研究し解明しようなどと誰が考えつくことだろうか。きっと、子どもたちのような柔軟な発想にそのヒントが隠されている。

※参考文献: 「田尻の野鳥」 宮脇 敏徳(サンクチュアリ能勢代表)

コラム筆者プロフィール

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サンクチュアリ能勢代表
宮脇 敏徳 先生
大阪府能勢町の小学校教員・校長を歴任した後、大阪府鳥獣保護員、日本野鳥の会大阪支部会員、NPO法人シニア自然大学校会員として探鳥活動の指導・啓発、自然保護活動に参加。弊社開催の里山ハイキングやバードウォッチングのナビゲーターとして、初心者にも解りやすく野鳥の魅力を教えてくださる野鳥の案内人。


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