星のソムリエがお届けする、天体コラム Vol.8『カノープス』
カノープスっていう星の名前を聞いたことありますか?
東京あたりから見えるのは、冬のある一時期だけの限定星で、この星を見たことがある人はほとんどいないのではないでしょうか?カノープスは南天の低空に位置するりゅうこつ座という星座のα星(1等星)です。北半球と南半球を合わせた全天で21個ある1等星の内の1つです。明るさは全天でなんと2番目の明るさを誇るキラキラ星そのものと言えます。ちなみに1番明るいのは、皆さんご存知のそうです、おおいぬ座のシリウスです。カノープスの星の色はシリウスと同じ青白い輝きを本来はしています。地球からの距離は約300光年で、われわれが現在見ているカノープスの星の光は、ちょうど江戸時代の大石内蔵助が率いる赤穂浪士たちが討ち入りをしたころに光った光を見ていることになります。
「見ると幸せになれる」という言い伝えも
そのカノープスは通称「長寿星」とか「南極老人星」と言って、とてもおめでたい星として扱われています。南半球では高度も高く昇るので容易に見ることが出来るのですが、北緯36度の東京においては、MAXでも高度2度にしか上がってきません。高度2度といえば、通常は街灯や民家などの光害に搔き消され、晴れていても薄く雲がたなびいていて、ビルや建物の陰に隠されてしまう高さです。つまりめったに見ることができないから、見ると幸せになれる、長生きができると言われています。
東京の街中でも観察可能
筆者もいままでに4回しか見たことがありません。こちら↓が、昨年宮古島で撮影したカノープス。
写真の下の方、ちょっと右寄りにある白い星がカノープスです。ちなみにその上の方には全天恒星で一番明るいシリウスが輝いているのが分かりますか?そのシリウスの右上にはオリオン座がいますね。冬の大三角も冬の天の川も写っています。
中でも一番感動したのは、東京都にあるJR三鷹駅の近くの跨線橋の上から見たカノープスです。そこだけはなんと南の方角に高い建物がなく、低空まで見渡せる奇跡的なスポットなのです。さすがに街灯の光にあふれていて眼視では厳しいので、双眼鏡を使って30分ほど探しました。見つけたときのカノープスは真っ赤な色をしていて、そばにある鉄塔の赤いランプと見間違えそうな感じでした。そうなんです。。。本来は青白いはずのカノープスが赤色に見えるのです。あまりにも高度が低すぎて大気の減光の影響で赤く見えるのです。ちょうど夕陽と同じ現象です。おとなりの中国では赤い色はおめでたい色なので、長寿星としての伝説が伝わって来たのです。
カノープス観察に絶好のシーズン
季節的には冬の時期、特に1月末から2月中旬にかけてがカノープス観望にお薦めとなります。カノープスはおおいぬ座の1等星シリウスの下(南)の方にあって、地平線ぎりぎりの低空をかすめるように東から西へ移動します。
残念ながら東北地方より北部ではカノープスは地平線下なので見ることはできません。あしからず。。
コラム筆者プロフィール
村上将之
Masayuki Murakami
1963年 魚座生まれ。
東京都国立市在住。
「星のソムリエ」「星空宇宙天文検定2級」を取得。
ネイチャーショップKYOEIにて情報企画業務やブログ制作のかたわら、「NHK学園講師」として星空講座のレクチャーや南十字星ツアーなども手掛けている。そのほか幼稚園や小学校や学習館などでも星空教室を開催。最近はふたたびバードウォッチングにもはまり、日本野鳥の会の探鳥会にも出没している。