野鳥図鑑〜日本古来から愛されてきた鳥「マガン」
日本では天然記念物に指定されている「マガン」はカモ科マガン属の野鳥で、冬鳥として本州の水田が広がる湖沼に群れで渡来します。その多くがは、宮城県の蕪栗沼・伊豆沼の周辺で冬を越しますが、日本に渡来する際の中継地点として北海道美唄市の宮島沼が有名です。国内最北かつ国内最大の寄留地としてピーク時には6万羽が羽を休めると言われています。
「マガン」の繁殖地はカナダ・アラスカ州・シベリア東部などですが、和歌や俳句、絵画、小説といった作品の題材になってきた鳥でもあり、古くから日本人に親しまれています。
V字隊列で羽ばたく群れの風景は冬の風物詩
雁行(がんこう)と呼ばれる美しいV字の隊列で羽ばたく光景は、日本では冬の風物詩とも言われています。風の抵抗を減らすため、また気流に乗るためにV字の形で飛びますが、先頭がいちばん抵抗を受けてしまうので、疲れると後ろに移動、次が先頭に出て助け合いながら飛びます。後ろを飛ぶ「マガン」は、がんばれー!と先頭をはげますかのように「カハン、カハン」と鳴きます。
「マガン」は餌場とねぐらを往復します。夜が明ける頃、ねぐらからいっせいに飛び立つ光景を「ねぐら発ち」、夕方になって餌場から隊列をなして戻ってくる光景を「ねぐら入り」と呼びます。朝焼け、夕焼けの空を背景に飛ぶ幻想的な風景は、今も変わらず多くの人を魅了しています。
「白いおでこ」とお腹の縞模様がチャームポイント
「マガン」の全長は65~86㎝で、翼を広げると135~165cmほどにもなる大型の水鳥です。体の上面は黒みのある茶色で尾羽に向かって黒色が強くなり、尾羽の付け根は白色です。一見地味な印象ですが、ピンク色やオレンジ色で、おでこからくちばしにかけての白色の風貌が印象的です。英語名、中国語名、ロシア名共に「白いおでこ」という意味を表す言葉が使われており、名前になるほどの最大の特徴と言えます。また、お腹の黒い縞模様も特徴的ですが、幼鳥の頃のおでこは白くなく、お腹の縞模様もありません。「ヒシクイ」と間違えられることが多いですが、「ヒシクイ」はくちばしが黒色なので、くちばしで見分けることができます。
国の天然記念物「マガン」の住みやすい環境に
昭和の初め頃までは全国各地で見られた「マガン」も、生息環境の破壊、狩猟によって生息数が激減した事から、1971年に国の天然記念物に指定されました。その後、愛鳥活動家たちの地道な保護活動の効果もあり、少しずつ個体数が増えてきて、現在では20〜30万羽が日本で越冬していますが、その9割以上が宮城県北部に集中しており、全国的に見て飛来地は回復していません。原因のひとつは、開発によってねぐら となる湿地が消滅してしまったことが考えられていて、デリケートな「マガン」は、環境が少しでも悪くなると、二度とその場所に戻ってこなくなってしまいます。「マガン」の好む環境を、これ以上減らさないようにしていきたいですね。
そんな「マガン」に出会えたよ!という方は、是非ネイチャーランドのギャラリーページにお写真をご投稿ください。お待ちしています!
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