能勢ネイチャーランド

【野鳥観察基礎知識】

宮脇先生の野鳥コラムVol.13「昔むかし、カラスのお話 後編」


前回のコラムでは日本で観察される代表的なカラスの特徴や、神として崇められるカラスのお話を紹介しました。昔の人たちは、カラスはもちろん、いろんな鳥たちを私たち人間と同じ仲間として受け入れ、仲良く「共存」してきました。

野鳥と聞くと、色とりどりな模様でその美しい姿も魅力のひとつに挙げられますが、カラスは皆さんご存知のとおり真っ黒な鳥。カラスには生まれ持ってチロシナーゼというメラニンを持っていて、希に持っていない白いカラスも存在するそうです。カラスの種類は黒色だけではなく、白や白と黒の2色、暗褐色に白斑点のついているものやクチバシが黄色いカラスもいます。黒は日光を吸収しやすいので、夏はカラスにとって暑さは尋常ではないはずです。夏場、カラスを見ていると翼を広げて放熱していたり、口を半開きにして口の中で気化熱を利用して暑さをしのいでいる姿が見受けられます。

では、なぜ、このような色をしているのでしょうか。明確な理由は不明ですが、日本にはカラスが黒い姿になった、おもしろい童話がいくつか残されているので紹介したいと思います。

~フクロウの染物屋~
昔々、鳥は全種類白一色の装いであった。
知恵者のフクロウは一計を案じ、さまざまな染料を用意して鳥たちの羽をお好みの柄に染め上げる「染め物屋」を開業した。

ツバメ「エレガントな中にもアクセントを感じられるデザインにして欲しいんだ」
フクロウ「ホウホウ」
スズメ「畑にそっと忍び込むために、目立たない迷彩柄にして頂戴」
フクロウ「ホウホウ」

すべての鳥が一通り染めてもらった頃、鳥社会でも洒落者と呼び名の高いカラスがフクロウのもとにやってきた。

カラス「今までにない、誰が見てもすぐにわかる素晴らしい色にして頂戴」
フクロウ「今までに素晴らしい色ねぇ・・・」

フクロウは持っていた染料のすべてを引っ張り出し、混ぜ合わせてカラスに見せます。その側で「アーでもない」「カーでもない」と何かと注文をつけてくるカラス。ついにフクロウはすべての染料ツボに入れ、「さぁ、ここで行水してください」とカラスにすすめた。

すると、すべての染料が混ざり合いカラスの全身は黒一色に。

カラス「なんだ、真っ黒じゃないか!」
フクロウ「えっ? ご注文通り、素晴らしい色ではありませんか。これなら誰が見ても、一目であなたとわかりますよ」
カラス「確かに一目で分かるけど、まっ黒なんてひどいや! 何とかしろ!」

烈火のごとく怒り出したカラス。

以来、カラスはフクロウを見かけると、集団で騒ぎ立てて追い回すようになった。フクロウはカラスの怒りを避けるために、カラスが眠る夜間に活動時間帯を移し、今でも昼間は森にかくれているのです。

※参考文献:「田尻の野鳥」 宮脇 敏徳(サンクチュアリ能勢代表)、「カラスの大研究」国松俊英(文)・関口シュン(絵)/PHP研究所

コラム筆者プロフィール

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サンクチュアリ能勢代表
宮脇 敏徳 先生
大阪府能勢町の小学校教員・校長を歴任した後、大阪府鳥獣保護員、日本野鳥の会大阪支部会員、NPO法人シニア自然大学校会員として探鳥活動の指導・啓発、自然保護活動に参加。弊社開催の里山ハイキングやバードウォッチングのナビゲーターとして、初心者にも解りやすく野鳥の魅力を教えてくださる野鳥の案内人。


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