能勢ネイチャーランド

【野鳥観察基礎知識】

宮脇先生の野鳥コラムVol.12「昔むかし、カラスのお話 前編」


少し前にテレビなどでも取り上げられていた、“ICカードを使って切符を買おうとするカラス”は、みなさん方の記憶にも新しいのではないだろうか。私たちにとって、もっとも身近なカラスですが、日本では10種ほどが観察されている。よく見かけるハシブトガラス、ハシボソガラスをはじめ、オナガ、カケス、ホシガラス、カササギ、ルリカケスは留鳥だが、残りのワタリガラス、ミヤマガラス、コクマルガラスは秋に渡ってきて日本で冬期を過ごす冬鳥。その内、大阪では7種(大阪鳥類目録2016より)ほどのカラスの仲間が観察されている。

人間と同じ生活圏で暮らすカラス

私たちと同じ生活圏で暮らす代表的なカラスとして、「ハシブトガラス」と「ハシボソガラス」の2種が挙げられる。どちらもよく似ているが、よく見てみると、見た目や動きにそれぞれの特徴が確認できる。

身近なカラス① ~ハシブトガラス~


・くちばしが太く、くちばしの上部がアーチ状にカーブしている
・頭部が丸く出っ張っている
・「カァー」と澄んだ声で鳴く
・両足を出してぴょんぴょん跳ねるように歩くことが多い

身近なカラス② ~ハシボソガラス~


・くちばしが細く、くちばしのカーブが緩やかでまっすぐ
・頭部が平らでまっすぐ
・「ガァー」とガラガラ声で鳴く
・足を交互に出して二足で歩くことが多い

神の使いとして崇められるカラス

カラスは人間にとって「ネットをかけてもゴミをあさる」「人の頭を翼ではらって悪さする」といった良くない印象を持たれがちだ。しかし、実際にカラスはとても記憶力がよく、独自の遊びを考え出したり、道具を使って食べ物を得るカラス(カレドニアガラス)もいるなど非常に頭の良い鳥と言われています。日本では、そんな賢いカラスを昔の人々は神の使いとして崇め、数多くの神話が残されている。日本書記の中では、神武天皇が現在の和歌山県熊野に上陸し、大和へ向かう途中に道に迷い困っていると、天照大御神がつかわした一羽のカラスが道案内をしたと記されている。熊野大社では古くからカラスは神の使いとして崇められ、現在も社務所に置かれたお守りや札、絵馬、手ぬぐいなどはすべてカラスの絵が描かれている。また、この熊野大社以外にも、伊勢神宮や諏訪神社、住吉神社、賀茂神社などの名だたる神社がカラスを神の使いとしている。

世界や日本には、カラスが主人公であったり、大切な役割をする神話や昔話がたくさんあり、現在でも語られている。昔の人たちは、カラスはもちろん、いろんな鳥たちを私たち人間と同じ仲間として受け入れ、仲良く「共存」してきた証しでもある。次回、「昔むかし、カラスのお話~後編~」では、世界や日本で語り継がれている神話や昔話をご紹介したいと思います。お楽しみに。

※参考文献:「田尻の野鳥」 宮脇 敏徳(サンクチュアリ能勢代表)
「カラスの大研究」国松俊英(文)・関口シュン(絵)/PHP研究所

コラム筆者プロフィール

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サンクチュアリ能勢代表
宮脇 敏徳 先生
大阪府能勢町の小学校教員・校長を歴任した後、大阪府鳥獣保護員、日本野鳥の会大阪支部会員、NPO法人シニア自然大学校会員として探鳥活動の指導・啓発、自然保護活動に参加。弊社開催の里山ハイキングやバードウォッチングのナビゲーターとして、初心者にも解りやすく野鳥の魅力を教えてくださる野鳥の案内人。


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