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【野鳥観察基礎知識】

宮脇先生の野鳥コラムVol.1「小鳥のうた」から学ぶ鳥のさえずり

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♪小鳥はとっても歌が好き 母さん呼ぶのも歌で呼ぶ
 ピピピピピ チチチチチ ピチクリピイ
 小鳥はとっても歌が好き 父さん呼ぶのも歌で呼ぶ
 ピピピピピ チチチチチ ピチクリピイ♪

この歌は、多くの人が一度か二度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?
「小鳥のうた」の歌は、七・五調の誰にでも親しみやすい歌で、現在でも童謡として歌われています。

しかし、この歌詞の中で「小鳥が母さんや父さんをさえずって呼ぶ」とされているのですが、実は鳥の世界で「さえずる」のはほとんどが父さん(♂)であり、母さん(♀)や子どもは歌ったりしません。この作詞家の時代には、鳥のさえずりについての野鳥の研究が進んでなかったのかも知れませんね。

そもそも、鳥の「さえずり」とは

鳥の鳴き声には、「さえずり」と「地鳴き」の二種類があります。地鳴きは、オスもメスも、ヒナも出す短い単純な音で、一年中聞かれます。最近の研究によると、さえずりよりも地鳴きの方が、鳥の気分をよく表しているということが分かってきました。

一方、さえずりはもっと長くて複雑で、美しい節回しの鳴き方のことです。スズメ目の鳥は、きれいな声でさえずる鳥が多いため、私たちはさえずりのことを「歌」と呼んでいます。

鳥たちが「さえずる」理由とは?

さえずりにはさまざまな機能があるようですが、ほとんどの場合は「父さん」であるオスが鳴きます。「母さん」であるメスを呼ぶための求愛行動としては、さえずりが重要な働きをします。しかし、鳥の中に変わり者の種もいます。タマシギという鳥は、一妻多夫の鳥で、メスが求愛するため、メスがさえずります。

また、なわばり宣言においてもさえずりの重要な働きがあります。その他にも、メスの繁殖活動を促したり、ヒナにさえずりを教える、つがいの絆を強める、なわばりやメスを奪いにくるライバルのオスたちに自分の存在をアピールするなどの働きがあると言われています。

「さえずり」の種類について

なわばりをつくる時期、巣をつくる時期、産卵の時期、メスが抱卵する時期など、繁殖の段階が変わってくると、さえずり方を変える鳥もいるようです。

地鳴きやさえずり方は、その種のDNAに組み込まれているため、習わなくても鳴くことはできますが、正常な歌をさえずることができるようになるには、成鳥の鳴き声を聞いて学習する必要があります。

しっかりと学習したオスは、さえずりの配列や間隔を自分なりに変えたり、変異させたり、替え歌にしたりして個性的なさえずりをするようです。メスに求愛する際、複雑な節回しでさえずりができるオスの方が、あるいは、レパートリーの多いオスの方がもてるという報告もあるようです。これは、複雑な歌を覚えたり学習したり、替え歌を作り出したりできる能力のあるオスの方が、それだけ優秀な遺伝子を持っているということを示すからだと言われています。

メスが、さえずり上手なオスをパートナーに選ぶのはヒトの世界も同じでしょうか?

※参考文献:「鳥の声と生態」 藤田 薫(横浜自然観察の森レンジャー)
「田尻の野鳥」 宮脇 敏徳(サンクチュアリ能勢代表)

コラム筆者プロフィール

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サンクチュアリ能勢代表
宮脇 敏徳 先生
大阪府能勢町の小学校教員・校長を歴任した後、大阪府猟銃保護員、日本野鳥の会大阪支部会員、NPO法人シニア自然大学校会員として探鳥活動の指導・啓発、自然保護活動に参加。弊社開催の里山ハイキングやバードウォッチングのナビゲーターとして、初心者にも解りやすく野鳥の魅力を教えてくださる野鳥の案内人。


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