能勢ネイチャーランド

【野鳥観察基礎知識】

宮脇先生の野鳥コラムVol.9「背筋を伸ばして、人生を渡る苦労家~ツグミ~」

大阪・能勢の田尻では、10月下旬ごろから「クワッ、クワッ」と鳴きながら飛んでくるツグミと出会うことがある。秋から冬にかけて日本へ渡ってくる冬鳥で、シベリア中央部から佐渡島を通過して能勢へと渡ってきたツグミを見かけると「長旅、本当にご苦労さんでした」と言いたくなる。

さて、大型ツグミ類を含むスズメ目ヒタキ科の鳥は、昔から「とても美しい声でさえずる鳥」と言われ、コマドリ、アカヒゲ、マミジロ、マミチャジナイ、アカコッコ、イソヒヨドリ、コルリ、アカハラ、シロハラなど、超一流の歌い手たちが勢ぞろいしている。以前は、ツグミ科とされてきたツグミ類はヒタキ科に統合され、2012年発行の目録7版では、小型ツグミ類、イソヒヨドリ類、大型ツグミ類に分類されるようになってきている。

能勢町で見られる鳥の中で、「ツグミ」の言葉が使われる鳥に、ツグミ、クロツグミ、トラツグミの三種がいる。そのツグミ類の特徴として、その体全体、特に腹部に暗色の小さな斑(まだら)模様が多く散らばっていることは共通している。

名称の一部にツグミが入る鳥は上記の三種あるが、ここで紹介するツグミは、種ツグミのことである。クロツグミやトラツグミの鳴き声は、とても明朗で、特徴的な鳴き声であるが、種ツグミの鳴き声は、上記の通り、「クワッ、ツワッ」とよく鳴くが、美しくさえずると言うほどのものではない。

「ツグミ」の特徴と好きな食べ物

ツグミの大きさは体長約24cm、翼開長39cmほど。体色は背中・頭・尾は茶色で、眉の部分と喉・お腹が白いのが特徴的。胸から脇腹にかけての黒い鱗模様は個体によって様ざまだが、嘴は黄色で先端が黒くなっている。オスとメスの見分け方としては、背中の色や胸にある斑の濃さで判別ができる。濃くはっきりしていればオスで、薄ければメス。雑食なので土中に潜むミミズや昆虫、熟した柿や木の実を好んで食べている姿が見かけられる。

苦労が多かった「ツグミ」の歴史

ツグミは、かつてカスミ網を使って大量に捕獲され、いわゆる「焼き鳥」にされていた悲しい歴史がある。現在でも、密猟が後を絶えず、大きな社会問題となっている。その場面が『美味しんぼ』という漫画にも出てくるから一読したい。そのためか、人間にはとても用心深い。人間の気配がないと木から地上に降りてきて、背筋を伸ばしてあたりを見渡し異常がないことを確認してからエサを採る。両足を揃えて数歩ピョンピョンと歩いては立ち止まり胸をそらしては静止するという格好から、昔は鳥馬(ちょうま)と呼ばれていたこともあるのだとか。エサを採るたび背筋を伸ばすツグミはまさに苦労人でもある。

※参考文献: 「田尻の野鳥」 宮脇 敏徳(サンクチュアリ能勢代表)

コラム筆者プロフィール

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サンクチュアリ能勢代表
宮脇 敏徳 先生
大阪府能勢町の小学校教員・校長を歴任した後、大阪府鳥獣保護員、日本野鳥の会大阪支部会員、NPO法人シニア自然大学校会員として探鳥活動の指導・啓発、自然保護活動に参加。弊社開催の里山ハイキングやバードウォッチングのナビゲーターとして、初心者にも解りやすく野鳥の魅力を教えてくださる野鳥の案内人。


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